小型旅客船・遊漁船の安全設備

安全設備の法定化。
何を、いつまでに?

法定無線、位置発信装置、救命いかだ、隔壁の水密化。4つの設備の役割と、船ごとに異なる対象・適用日・検査期限を分かりやすく整理します。

図で順番に確認する

内容確認:2026年9月29日

無線で連絡する船長と、救命いかだへの移乗を確認する乗組員
設備は4種類。対象と期限は、船ごとに確認。

旅客定員・用途・航行区域・水温・船の構造により必要な対応が変わります。購入前に、検査証書と次回検査を確認しましょう。

動画でわかる

安全設備の法定化を
動画で解説

4つの安全設備と、旅客船・遊漁船の対応時期を動画でも解説します。

YouTubeで見る

搭載不要・代替措置を知る

搭載が不要となる場合と
代替措置を動画で解説

無線・AIS・救命いかだ・水密化について、搭載を要しない場合と代替措置を詳しく解説します。

YouTubeで見る
01

安全設備の法定化は、
4つの備えを強めること。

船舶事故に備える設備は、一つですべてを担うものではありません。陸上に連絡する、船の位置を知らせる、水中に入らず救助を待つ、浸水の被害を抑える。それぞれ違う役割があります。

4つの役割と、対応する設備

連絡をつなぐ

法定無線設備

陸上と常時連絡できる手段を確保します。

位置を知らせる

非常用位置等発信装置

AISやEPIRB等で、船の位置情報を伝えます。

水の外で待つ

救命いかだ等

冷たい水の中で救助を待つ状況を避けます。

浸水に備える

隔壁の水密化等

沈没を防ぎ、退船までの時間を確保します。

すべての船に、同じ設備を一律に付ける制度ではありません。

旅客定員、船の大きさ、用途、航行区域、水温、船の構造によって対象と対応方法が変わります。まず船舶検査証書・船舶検査手帳で条件を確認します。

02

いつまでに必要?
適用日と検査日を、セットで見ます。

下のカードは、義務化の対象に当たる船の適用日の整理です。現存船の経過措置では、原則としてその日以降に最初に受ける所定の検査までに対応します。新造船の適用や個別の免除・代替措置は別途確認が必要です。

旅客定員13人以上

海上運送法に基づく人の運送に使用する船舶

法定無線設備
適用済み未対応の場合は検査機関へ確認
非常用位置等発信装置
2024年4月1日
救命いかだ等
2025年4月1日
隔壁の水密化等
2026年4月1日

旅客定員12人以下

海上運送法に基づく人の運送に使用する事業船

法定無線設備
2025年6月1日
非常用位置等発信装置
2025年4月1日
救命いかだ等
2026年4月1日
隔壁の水密化等
2027年4月1日

遊漁船業だけに使う船

海上運送法の人の運送事業との兼業がない場合

法定無線設備
2026年10月1日
非常用位置等発信装置
2026年10月1日
救命いかだ等
2026年10月1日
隔壁の水密化等
2027年4月1日
現存船の経過措置:設備ごとに、期限となる検査が違います

法定無線設備

起点適用日
この検査までに対応最初の中間検査
または定期検査

非常用位置等発信装置・救命いかだ等・隔壁の水密化等

起点適用日
途中にある場合中間検査
この検査までに対応最初の定期検査

「次の検査」とだけ覚えず、中間検査か定期検査かまで確認します。適用日より前からある設備義務や、個別に付された航行条件も守る必要があります。

遊漁船と観光遊覧等を兼業する船は、後ろの日付に合わせないでください。

遊漁船業だけの船とは区分が異なります。海上運送法の人の運送事業にも使用する場合は、その区分に応じた適用を確認します。

03

「連絡する設備」と
「位置を知らせる設備」は別です。

法定無線設備

運航中、陸上との間で船の運航に関する連絡を常時行える設備です。機器を買うだけではなく、通信相手・通信範囲・無線局免許・操作する人の資格等も合わせます。

沿海区域等携帯電話を法定無線設備の代わりにはできません。

平水区域の特例サービスエリア内で、免除申請の許可を受ける等の条件を満たせば、携帯電話を法定設備にできる場合があります。

非常用位置等発信装置

対象となる船ではAIS(簡易型を含む)や、要件を満たすEPIRB等を確認します。非常時に船の位置を把握できるようにする設備です。

対象水域沿海区域等の対象船について確認。平水区域のみの船に、この新たな搭載義務を一律に当てはめません。

既設機器がある船型式・機能・免許と経過措置を確認。搭載済みでも、適合性を確認してから判断します。

機器の選定から、実際に使える体制まで
  1. 航路を確認

    運航する全域で、陸上と通信できるか。

  2. 機器を選定

    必要な性能・機能を満たしているか。

  3. 免許等を確認

    無線局、従事者、通信相手等を整える。

  4. 検査・運用

    船舶検査で確認し、使用方法を共有。

琵琶湖を除く湖・川・港内など、対象外や取扱いが異なる水域があります。無線と位置発信装置では対象範囲も同じではないため、設備ごとに判定します。

04

救命いかだ等は、
水温・水域・運航方法がポイント。

救命胴衣は水に浮くための備えです。救命いかだ等は冷たい水に入り続けることを避けて救助を待つための備え。役割が異なります。

救命いかだ等の対象を考える水温区分
10℃未満

対象となる水域を航行する船。河川・港内・対象外の湖のみを航行する船は除かれます。

10℃以上
15℃未満

平水区域を超えて航行する船が対象です。

15℃以上
20℃未満

平水区域を超えて航行する船が対象。ただし、浸水しない構造や母港から5海里以内のみの航行等の除外があります。

船舶検査証書の航行区域と、公表された水域・時期ごとの最低水温で判断します。その日の気温や、その場で測った水温だけで対象外にはできません。湖については琵琶湖、霞ヶ浦、サロマ湖、猪苗代湖、中海、屈斜路湖、宍道湖、支笏湖が対象水域です。

救命いかだ等を搭載する

落水せずに乗り移るための性能を備えた救命いかだや、内部に人を収容する救命浮器などを確認します。乗り込み場所の高さ等によって必要な設備も異なります。

認められた代替方法で対応する

運航時期の制限、伴走船、救助船の配備、船の構造、航行範囲の制限など。単に「近くに別の船がいる」だけでは条件を満たしません。

搭載を要しない方法を使う場合の準備
  1. 運航条件を決める

    時期、水域、水温、救助体制など、使える方法の条件を確認します。

  2. 実行できる体制を作る

    伴走・救助に必要な人数、救助能力、設備、到着時間等を整えます。

  3. 検査前に資料をそろえる

    必要な申告・申請を行い、検査証書の航行条件等に反映します。

代替方法にも船ごとの要件と手続きがあります。現場判断だけでいかだを省略することはできません。

05

隔壁の水密化は、
船の中への浸水と広がりに備える対策。

水密全通甲板や水密隔壁等により、船内への浸水や、浸水した水が広がることに備えます。船の大きさや航行区域により必要な構造が変わります。

水密隔壁で、浸水する範囲を区切る考え方

区画の境目を水密にし、船として必要な浮力・復原性を確保

実際の適合性は、区画配置や船体の構造・計算等で確認します。仕切りがあるだけで「水密隔壁の基準を満たす」とは限りません。

構造で対応する方法

水密全通甲板・水密隔壁など、対象船に求められる構造を確認し、造船所・検査機関と改修方法を検討します。

代替措置で対応する方法

対策が困難な現存船等では、条件に応じて浸水警報装置と排水設備の組合せ、または不沈性・安定性を持つ構造等による対応もあります。

警報装置やポンプは、必要な区画、能力、配置まで確認します。既存のビルジポンプがあるという理由だけで、一律に対応済みにはできません。

06

買う前に確認すると、
手戻りを減らせます。

  1. 1.検査証書・検査手帳を確認旅客定員、総トン数、船体長、航行区域、航行条件、次回検査の種類と時期。
  2. 2.実際の使い方を整理旅客運送・遊漁船のみ・兼業の別、営業時期、航路と水域。
  3. 3.設備ごとに対象と期限を確認既設の無線・位置発信装置・救命設備・船体構造も一覧にします。
  4. 4.検査機関・造船所・販売店と仕様を合わせる必要性能、取付け、免許、納期、改修期間、検査準備を確認します。
  5. 5.安全管理規程と訓練にも反映搭載場所、使い方、点検方法、非常時の役割を船と陸で共有します。

設備と運航の手続きを、一緒に整理。

当事務所では、運航内容に応じた許可・登録、安全管理規程などの相談に対応しています。設備の技術的な適合性や船舶検査は、検査機関・造船所等での確認が必要です。

安全管理・運航手続きを相談する
07

安全設備についての、よくある疑問。

2026年10月1日に、すべての遊漁船が一斉に搭載完了しなければいけませんか?

その日を適用日とする設備について、対象船の現存船には所定の検査までの経過措置があります。法定無線設備は最初の中間検査または定期検査、位置発信装置と救命いかだ等は最初の定期検査が基本です。船ごとの対象・検査日を確認してください。

携帯電話の電波が届けば、無線機は不要ですか?

電波が届くという理由だけでは決まりません。平水区域の特例を使う場合も、航行区域がサービスエリア内にあり、免除申請の許可を受ける等の条件があります。沿海区域等では携帯電話を法定無線設備の代わりにはできません。

救命胴衣があれば、救命いかだは不要ですか?

役割が異なります。救命いかだ等の対象船では、所定の設備を搭載するか、認められた代替方法の条件・手続きを満たす必要があります。

設備を新しくしたら、それで対応は終わりですか?

必要な免許・検査・書類と、現場での点検・操作・避難手順まで確認します。実際に使えるよう、船員への教育や安全管理規程の見直しも進めてください。