小型旅客船の乗組員のための訓練

特定教育訓練を、
準備から記録まで。

誰が対象で、何をどれだけ教え、どう記録するのか。自社の船と航路に合わせる特定教育訓練を、役割・流れ・時間と回数の図で解説します。

図で順番に確認する

内容確認:2026年9月29日

操舵室で船長が乗組員候補に海図を使って航路を説明する様子
資格に加えて、その船・航路で動ける力を。

自社の船舶と水域に合わせた講義・実船実水訓練を行い、効果測定、最終確認、記録保存まで進めます。

動画でわかる

特定教育訓練を
動画で解説

教材の準備、実際の船での訓練、評価、記録の残し方を具体的に解説します。

YouTubeで見る
01

特定教育訓練は、
「この船・この航路」のための訓練です。

操船の資格を持っていても、初めて使う船のくせや、航路の浅瀬・潮流・避難場所まで分かるとは限りません。実際に乗る船と運航する水域を理解し、安全に職務を行えるようにするのが特定教育訓練です。

安全な運航に必要な知識を、3つに分けて準備

この船を知る

操縦の特性、発航前の点検、救命設備の場所、緊急時に使う機器。

この航路を知る

風・波・潮流、浅い場所、他船の通り道、運航を中止する条件、避難場所。

この役割を果たす

船長、甲板員、その他の乗組員。それぞれが判断・実行・連絡する内容。

船舶操縦免許とは別の制度

必要な免許や履歴の条件を満たしたうえで、運航する船舶・航路に応じた訓練を行います。免許取得や一般的な講習の受講だけで、自動的に完了するものではありません。

管理者の更新・兼務講習とも別

安全統括管理者・運航管理者の資格者証の更新や兼務講習と、乗組員の特定教育訓練は目的・対象・進め方が異なります。

02

誰が、誰に、いつ行う?

旅客運送船舶運航事業に使用する総トン数20トン未満の船舶の乗組員が対象です。旅客定員13人以上の船だけではなく、該当する12人以下の事業船も含みます。5トン未満や、湖・川・港のみを航行する船も対象範囲に含まれます。

役割分担:事業者が準備し、指導者が教え、最後に確認
  1. 実施の責任船舶所有者等

    対象者・船舶・航路を整理し、計画と教材を準備。適切な指導者を選びます。

  2. 訓練と評価訓練指導者

    船と水域の特性を熟知する者が指導し、効果測定で理解と実行力を確かめます。

  3. 終了の確認船舶所有者等

    実施内容と効果測定を最終確認し、記録を保存します。

実施義務を負う「船舶所有者」には、船員法の適用関係に応じて船舶借入人等が含まれます。登記上の所有者名だけで担当を決めず、運航・雇用の関係を確認します。

船長候補

運航の判断、操船、非常時対応まで、船長として任せられるかを確認します。

甲板員候補

見張り、出入港作業、業務連絡、避難誘導など、担当する安全業務を訓練します。

その他の乗組員候補

旅客の案内・誘導など輸送の安全に関わる者。担当する運航・緊急時の業務を学びます。

初めて乗り組む直前までに、計画的に終了させます。

訓練終了から実際の乗組みまで長く空かないようにします。3年を超えて当該職務を離れた後の復職、上位職務への変更、船舶・航路の変更も確認が必要です。

03

訓練時間・回数は、
航路のグループと職務で変わります。

先に自社の航路を分類します。沿海区域以遠では、離岸距離、航行時間、水温等を組み合わせてグループ1〜3に分類し、平水区域のみはグループ4です。瀬戸内の特例や地方運輸局長の判断が関係する場合もあるため、船名や地域名だけで決めません。

分類の確認に使う条件

航行する区域

沿海区域以遠か、平水区域のみか。

岸からの距離

5海里未満か、5海里以遠か。

航行時間

2時間以内か、2時間を超えるか。

水域の水温

運航水域と時期に応じた最低水温を確認。

グループ1

船長候補
講義 40時間以上
実船実水 60回以上
甲板員候補
講義 20時間以上
実船実水 15回以上
その他乗組員候補
講義 5時間以上
実船実水 1回以上

グループ2・3

船長候補
講義 40時間以上
実船実水 30回以上
甲板員候補
講義 20時間以上
実船実水 15回以上
その他乗組員候補
講義 5時間以上
実船実水 1回以上

グループ4(平水)

船長候補
講義 20時間以上
実船実水 15回以上
甲板員候補
講義 8時間以上
実船実水 5回以上
その他乗組員候補
講義 5時間以上
実船実水 1回以上

上記は基本となる時間・回数です。担当職務により訓練項目が異なり、経験による特例や川下り等の追加の対応もあります。船長候補・甲板員候補では、避難港への離着桟・出入港、旅客の避難誘導、救命設備の確認に主眼を置いた訓練も1回以上行います(分割して2回以上とすることも可能)。

グループ1・2の船長候補は、講義の前に、原則として運航する海域での乗組み経験と理解度の確認も必要です。グループ1は複数年にわたる経験、グループ2は営業運航予定時季と同じ時季を通じた相当回数の経験が基本です。新規参入等の特例を使う場合にも、追加の実船実水訓練などの条件があります。

04

何を教える?
講義と実船実水で、理解をつなぎます。

学ぶ内容は12項目に整理されています。船長候補・甲板員候補・その他乗組員候補で必要な項目を確認し、自社の船・航路・業務に合わせます。

講義で理解し、実際の船と水域で確かめる

講義:知っておくこと

  1. 気象・水象・危険箇所
  2. 航行する水域の法令・ルール
  3. 自社の運航基準
  4. 故障・火災・衝突・座礁・浸水への対応
  5. 落水者・傷病者への対応
  6. 避難・航路からの離脱・救命設備

実船実水:できるようにすること

  1. 運航してよいかの判断
  2. 発航前の検査
  3. 出入港の作業
  4. 離着桟・操船
  5. 見張り・航海計器・業務連絡
  6. 避難・航路からの離脱・救命設備

自社の中止基準で考える

風・波・視程の情報をどこで確認し、どの条件で止めるか。実際の運航基準と航路上の危険箇所を使って学びます。

実際の機器で確かめる

備え付けの無線、計器、救命設備の位置と操作を確認します。一般論だけでなく、その船で行動できる状態にします。

自分の役割を動いて覚える

誰が通報し、誰が旅客を誘導するか。非常時の声かけや作業を、担当者ごとに確かめます。

「動画を見るだけ」「教材を渡すだけ」では完了しません。職務に応じた講義・実船実水訓練、効果測定と最終確認を行います。このページの動画も制度理解のための解説です。

05

準備から乗組みまで、
順番に進めると抜けを防げます。

特定教育訓練の実施手順
  1. 準備対象と計画を決める

    船・航路・職務・グループを確認。経験資料、指導者、教材、日程を用意します。

  2. 実施講義と実船実水

    該当者は先に乗組み経験等を確認。知識と実技を組み合わせて訓練します。

  3. 確認評価・最終確認・保存

    効果測定の合格と実施内容を確認し、記録を残して職務へつなげます。

教材には自社の情報を入れる

航路図、浅瀬や障害物、季節ごとの風・波、避難先、船の設備配置、連絡体制、自社の運航基準を盛り込みます。船・水域を熟知する指導者の経験も反映します。

回数だけをまとめて消化しない

できる限り運航シーズンを通して行い、夜間運航を予定するなら夜間も訓練します。1日に極端に集中させず、必要な条件で判断・行動できることを確かめます。

効果測定:できなかった項目は、追加訓練につなぐ
必要な知識・行動を確認できた

指導者の評価を受け、船舶所有者等が訓練の終了を最終確認します。

理解・判断・実技が不足していた

不足する部分を追加訓練し、再度評価します。時間・回数を満たすだけで終了させません。

営業運航中に訓練する場合も、航行の安全に支障がないことが前提です。訓練対象者は船員法で定める定員に含めず、必要な乗組み体制を確保します。

06

「実施した」を、
後から確認できる記録に。

訓練記録は船舶所有者等が作成・保存します。単に「教育済み」とするのではなく、対象者、船・航路、実施内容、時間・回数、指導者と評価が分かるように整えます。

記録にまとめる主な項目

特定教育訓練 実施記録

誰に
訓練対象者・職務・必要な経験の確認
何のために
対象船舶・航路・グループ・運航期間
いつ・何を
実施日・訓練項目・講義時間・実船実水の回数
誰が指導
指導者・評価者と実施体制
結果
理解度確認・効果測定・追加訓練・最終確認

航路を追加・変更するとき

新たな水域の気象・水象、危険箇所、規制、運航可否判断、避難先などを確認し、過去3年以内の訓練や経験と異なる部分を訓練します。

船を追加・変更するとき

船の大きさ・操船性能・視界・点検箇所・救命設備等の違いを確認します。同型船というだけで一律に訓練不要とは扱いません。

「3年間保存」と「3年ごとに全員が受講」は違います。初任・復職・職務変更・船舶や航路の変更など、訓練が必要になる場面を管理します。規程や水域の状況が変わったら、教材も見直します。

自社の安全管理と、訓練の準備を整理。

許可・登録、安全管理規程、使用船舶・航路の変更を含めて、準備すべき手続きをご相談いただけます。実船訓練は、船舶・水域に精通する適切な指導者と実施体制を確保して行います。

運航体制・安全管理を相談する
07

特定教育訓練についての、よくある疑問。

ベテランや、他社から来た船長にも必要ですか?

新しく乗り組む船・航路・職務に合わせて確認します。過去3年以内の訓練や経験と重なる内容の省略、一定の事前評価を行う場合の時間・回数の特例はありますが、経験者だから自動的に全て不要になるわけではありません。

一人で運航する小さな事業者も対象ですか?

事業規模だけでは対象外になりません。対象の船舶・事業・職務で判断します。自社内で適切な指導者を確保できない場合は、船と水域を熟知する外部の指導者等も含め、実施体制を検討します。

国の講習に申し込めば終わりますか?

この制度は船舶所有者等が自社の船・航路に合わせて実施する教育訓練です。一般的な講習を受けたことだけで完了とはなりません。対象者の訓練、評価、最終確認、記録保存まで行います。

昔から乗っている船員なら、船や航路を変えても訓練不要ですか?

船舶や航路を変更した場合は、従前の経験・訓練と異なる内容について訓練が必要です。2024年4月1日より前から乗り組んでいる人も、変更がある場合は確認してください。